サレジオの器

ーある日、美のタカラモノと出会ったー 

18.サレジオの器

修一が片山廬山の元を訪れてからすでに二年あまりの月日が立っていた。修一はすでに30になっていた。あれから修一はすでに廬山が認めるほどの逸材となっていた。まだ粗削りなところはあるが、廬山いわくすでに教えられるものはすべて教えたといった。つま…

17.頂上への道

修一が片山廬山の下で修業を開始してはや、二か月がたっていた。といっても、普段はほとんど雑用全般でガラス工芸についてなど基本的なさわりを教えてくれる程度で、何か作業をする時にもほとんど手伝わせてすらもらえなかった。そして、片山廬山には、住み…

16.巨匠との出会い【後編】

あたりは静まりかえっていた。 ひたすら歩いてきたくねくね道を抜けるとそこは少しだけ広い崖の上の峠のようなところだった。すでに時間はとっくに夕刻を過ぎていたのであたりはあまり見えなかったが、その峠の上に構えるかのように立っていた古い木造づくり…

15.巨匠との出会い【前編】

「片山廬山先生の元へ弟子入りしに行きます。」 そう一言書置きを残して家を出たのは昨夜のことだった。 親に心配かけさせまいとしたわけではない。もちろんそういう気持ちが少しもないと言えば嘘だったが・・・これは、修一自身の・・・自分の覚悟の問題だ…

14.覚醒

先生の予測はあたり、修一はみるみる上達していった。元々手先は不器用だったが、絵が好きだということもあり美的センスはいい方だったので型を取った後の作業工程については順当だった。 「すごい美的センスね・・・」 と一度先生に授業中にまたもや褒めら…

13.教室での日々

あの企画展と偶然出会ってから修一の頭からあの美しい映像が離れることはなかった。何かによって偶然誘われたような・・・そんな運命的なものだとさえ感じ取っていた。そして・・・それは何かに魅了されたというよりかはむしろ憑りつかれた、と言った方がい…

12.美のタカラモノ

あの後、僕はどこをどう通って家路に向かったのかも覚えていなかった。 正規社員にはもうなれない・・・?頑張ったら仕事で評価される・・・?それは一体どういうことなのだろう?と修一は思った。よしんば頑張ったとしてもそんな人生に明るい未来などあるの…

11.宣告

自宅に帰って来たのはさほど昔のことではなかったが、修一にとっては途方もないくらい時がたった後のように思えた。相変わらず変わらない殺風景な家の周りの景色と、実家の質素とも派手とも言えないちょうどいい雰囲気のリビングを見るとほっとしたような感…

10.孤独

アパートは僕以外誰もいなかった。僕はもはや抜け殻のように壁にもたれかかっていたので、気配すら発してはいなかった。なので、はたからみたらもぬけの殻のような部屋に見えたことだろう。 「少し・・・考えさせて・・・」 琴はそう言ってアパートを出て行…

9.波乱浮上

それからしばらく時がたった。 僕はすでに実家を出ていて、琴とひそかに二人で暮らし始めていた。琴がまだ妊娠2か月目で不安だから、実家に近い場所がいいとのことで、蒲田に近いとある駅前のこじんまりとした安いアパートで暮らすことにした。駅前と言って…

8.再会と別れ

それから晴れて結婚式が行われた。 結婚式場というほどではないが、そこそこ中規模の広さのホテルのホールを借り切ったので人数は52名ほど収容できるようだった。いわゆる大人数のウェディング用の大広間という格式高さではなかったけど、そこそこ豪勢な結…

7.愛の日々

気づいたら自分は彼女に簿記の勉強を教えるために、週末に時たま会うようになっていた。ある土曜は喫茶店だったり、その次の土曜は図書館だったり・・・都心の洒落たカフェで会ったこともあったが、勉強をするにはあまりもってこいの場所とは言い難かった。…

6.恋のリスタート

「え~25歳?修さん僕と同世代・・・?」「うん・・・そうだと思うよ。」勤め始めて2週間くらいたったある日、急に僕の歓迎会が行われた。蒲田の駅から徒歩7、8分くらいにある繁華街のとある居酒屋でみんなすでに酔い始めていてさっそくどんちゃん騒ぎが…

5.新たなリスタート

「それじゃあ・・・修一君これからはよろしくたのむね」 水川ネジの水川静社長にそう面接の時に言われたときは、心底ほっとした。 そんなに簡単に受かると思ってなかったからだ。 彼は父立彦の仕事の取引先の町工場の社長で、親の代からネジ工場を継いでいる…

4.就活の蹉跌

僕はいつもそうだ・・・肝心な時にいつもドジばかりする。運動会のリレーの大会の時にバトンを取り忘れてそのまま走り続けてしまい、横から先生に怒鳴るように言われていたが気づかずそのままゴールしてしまい、結局、無効でビリという結果になってしまいチ…

3.恋の喪失

桜井穂乃花と会ったのは実に2か月振りくらいだった。 「久しぶり修一」 「うん・・・久しぶり」 彼女は屈託のない笑顔を僕に見せながら喫茶店のテーブルの向こう側からそう言ってきた。 「あれ・・・もしかして元気ない?」 相変わらず勘が鋭い・・・ 多分…

2.嘘の発覚

修一がとっさにくたびれた寝間着姿で布団にくるまりながら仰向け気味に嘘をついたのは翌日早朝のことだった。 「今日は会社は休む。」 立彦がいつまでたっても起きてこない息子を心配にして、無理やり部屋に押し入ってきて聞いてみたら返ってきた答えがこの…

1.事件の発覚

聖フランシスコ・サレジオ 1月24日に、カトリック教会は聖フランシスコ・サレジオの日としてお祝いをします。サレジオ会の名前はここから取られています。サレジオ会の創立者ヨハネ・ボスコ神父(通称ドン・ボスコ)は、日本の幕末と同じような混乱した状…

サレジオの器~あらすじ~

仕事上の大ミスで会社をクビになった元エリート証券マンの修一は再就職もままならないまま、ある日将来を約束していた恋人兼婚約者の彼女にも振られ途方に暮れる日々を送っていた。そんな最中に修一は父立彦からある提案を受ける・・・ー元エリートが仕事や…