サレジオの器

ーある日、美のタカラモノと出会ったー 

2022-01-22から1日間の記事一覧

18.サレジオの器

修一が片山廬山の元を訪れてからすでに二年あまりの月日が立っていた。修一はすでに30になっていた。あれから修一はすでに廬山が認めるほどの逸材となっていた。まだ粗削りなところはあるが、廬山いわくすでに教えられるものはすべて教えたといった。つま…

17.頂上への道

修一が片山廬山の下で修業を開始してはや、二か月がたっていた。といっても、普段はほとんど雑用全般でガラス工芸についてなど基本的なさわりを教えてくれる程度で、何か作業をする時にもほとんど手伝わせてすらもらえなかった。そして、片山廬山には、住み…

16.巨匠との出会い【後編】

あたりは静まりかえっていた。 ひたすら歩いてきたくねくね道を抜けるとそこは少しだけ広い崖の上の峠のようなところだった。すでに時間はとっくに夕刻を過ぎていたのであたりはあまり見えなかったが、その峠の上に構えるかのように立っていた古い木造づくり…

15.巨匠との出会い【前編】

「片山廬山先生の元へ弟子入りしに行きます。」 そう一言書置きを残して家を出たのは昨夜のことだった。 親に心配かけさせまいとしたわけではない。もちろんそういう気持ちが少しもないと言えば嘘だったが・・・これは、修一自身の・・・自分の覚悟の問題だ…

14.覚醒

先生の予測はあたり、修一はみるみる上達していった。元々手先は不器用だったが、絵が好きだということもあり美的センスはいい方だったので型を取った後の作業工程については順当だった。 「すごい美的センスね・・・」 と一度先生に授業中にまたもや褒めら…

13.教室での日々

あの企画展と偶然出会ってから修一の頭からあの美しい映像が離れることはなかった。何かによって偶然誘われたような・・・そんな運命的なものだとさえ感じ取っていた。そして・・・それは何かに魅了されたというよりかはむしろ憑りつかれた、と言った方がい…

12.美のタカラモノ

あの後、僕はどこをどう通って家路に向かったのかも覚えていなかった。 正規社員にはもうなれない・・・?頑張ったら仕事で評価される・・・?それは一体どういうことなのだろう?と修一は思った。よしんば頑張ったとしてもそんな人生に明るい未来などあるの…

11.宣告

自宅に帰って来たのはさほど昔のことではなかったが、修一にとっては途方もないくらい時がたった後のように思えた。相変わらず変わらない殺風景な家の周りの景色と、実家の質素とも派手とも言えないちょうどいい雰囲気のリビングを見るとほっとしたような感…

10.孤独

アパートは僕以外誰もいなかった。僕はもはや抜け殻のように壁にもたれかかっていたので、気配すら発してはいなかった。なので、はたからみたらもぬけの殻のような部屋に見えたことだろう。 「少し・・・考えさせて・・・」 琴はそう言ってアパートを出て行…

9.波乱浮上

それからしばらく時がたった。 僕はすでに実家を出ていて、琴とひそかに二人で暮らし始めていた。琴がまだ妊娠2か月目で不安だから、実家に近い場所がいいとのことで、蒲田に近いとある駅前のこじんまりとした安いアパートで暮らすことにした。駅前と言って…

8.再会と別れ

それから晴れて結婚式が行われた。 結婚式場というほどではないが、そこそこ中規模の広さのホテルのホールを借り切ったので人数は52名ほど収容できるようだった。いわゆる大人数のウェディング用の大広間という格式高さではなかったけど、そこそこ豪勢な結…